天然皮革とは、動物の皮を使用したいわゆる「本革」です。本革のバッグや財布は人気ですが、合成皮革との違いをよく理解していない方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、天然皮革とは何かを徹底解説します。合成皮革との違いや天然皮革の特徴、お手入れするうえでの注意点もあわせてご紹介していきます。最後までどうぞご一読ください。
目次
「天然皮革」とは?
天然皮革とは、動物の皮を鞣したものです。動物の「皮」は鞣しの工程を経て、はじめて「革」と呼ばれるようになります。天然皮革として有名なのは牛革ですが、豚革や馬革、ワニ革、カンガルー革など種類が豊富。天然皮革は「本革」や「リアルレザー」とも呼ばれるため覚えておいてみてはいかがでしょうか。
天然皮革の特徴は後述しています。そちらもあわせてチェックしてみてください。
天然皮革と合成皮革の違い
天然皮革と似た言葉に、合成皮革があります。こちらもレザーの一種ですが、合成皮革はその名のとおり合成樹脂を組み合わせてつくっており、動物の皮は使っていません。動物の皮を使っていない点では、より天然皮革に似せた人工皮革も同様です。
天然皮革と合成皮革を見分けるためにも、双方の違いを詳しくご紹介します。
合成皮革との違い(1)構造
天然皮革と合成皮革の大きな違いは、構造にみることができます。天然皮革は動物の皮からつくられているため、よくみると毛穴の跡などの凹凸があり、決して均一ではありません。革の裏側が起毛状態になっているのも、天然皮革である証拠です。
一方、合成皮革の表面はポリウレタン樹脂やナイロン、ポリエステルなどでつくられています。天然皮革に似せて人工的なシワを型押ししていますが、パターンの整い具合から合皮とわかるでしょう。革の裏側にも目立った特徴はありません。
合成皮革との違い(2)お手入れの必要・不要
構造をみても違いがわからないという場合は、商品についているタグを見ると一目瞭然です。品質表示法に基づき、革製品は製品の60%以上が本革である場合、革の種類を明記する必要があります。
合成皮革の場合、この義務が課せられていません。その代わりに「お手入れ不要」と書かれている場合もあるため、天然皮革と合成皮革を見分ける目安にしてみてください。
合成皮革との違い(3)吸湿・放湿性
天然皮革と合成皮革には、吸湿性や放湿性にも差があります。動物の皮からつくられた天然皮革は、呼吸をする素材です。具体的にいうと、天然皮革は湿気を吸収しつつ水分を放出しています。天然皮革は雨濡れに弱く、シミができやすいのも吸湿性によるものです。
一方、人工的につくられた合成皮革は、当然のごとく呼吸しません。水濡れに強く、雨の日に使用しても影響を受けにくいのは、合成皮革の大きなメリットといえるでしょう。
合成皮革との違い(4)経年変化
使い続けてこそわかる、天然皮革と合成皮革の違いもあります。天然皮革は、長年使うことによって経年変化を楽しめるのが最大の魅力。お手入れしながら使うことで10年以上の長持ちが期待できるだけでなく、ほかにはない味わいが生まれます。
反対に、合成皮革は時が経つにつれ、当然ながら劣化していきます。空気中の水分を含んでいくため、使ってなくても劣化を止めることはできません。天然皮革と合成皮革は、長年使うことでなおさら顕著に表れるといえます。
合成皮革との違い(5)におい
天然皮革と合成皮革では、においにも差があります。天然皮革は、皮をなめす際に使用するタンニンやクロムのにおいがします。
一方、合成皮革は、石油を原料とする合成樹脂から成っているため、油のようなにおいがするか、無臭かのいずれかです。天然皮革と合成皮革の違いを知るために、一度革製品の専門店などに赴き、本革のにおいを体感しておくと分かりやすいです。
合成皮革との違い(6)価格帯
価格帯の差も、天然皮革と合成皮革の違いの一つです。合成皮革は比較的安価な一方、数に限りのある天然素材を用いて、加工に時間もかかる天然皮革は高価な傾向にあります。
ただし、天然皮革は価格がはるぶん、長持ちするためコストパフォーマンスは優秀です。長く愛用したり、大切な人への贈り物にしたりするだけの価値はあります。
天然皮革ならではの特徴
天然皮革には、動物の皮である天然素材からできているからこその特徴があります。それらの特徴は見た目や肌ざわり、使い込んでこそ分かることもあります。
以下では、天然皮革の主な特徴を3つご紹介します。
天然皮革の特徴(1)風合いが異なる
動物の皮からなる天然皮革は、その一枚一枚に風合いの差がみられます。牛皮や豚皮といった種類の違いにとどまらず、同じ種類であっても個体差があるのが特徴です。個体差は加工の技術をもっても、すべてを消すことはできません。風合いの差こそ、天然皮革における最大の特徴といえます。
以下では、天然皮革ならではの風合いを詳しくご紹介します。
血筋
血筋とは、血管の痕が浮き上がってできる自然の風合いです。血管の筋が幾重にも走り、血管近くの皮を使用しているほどその痕は濃くなります。天然皮革のなかでも、特に光沢感を出した皮の表面にみられるためチェックしてみてください。
トラ(天然シワ)
トラとは、動物の皮にある天然のシワです。自然の風合いを損なわないよう、革に加工されるときも残される可能性があります。シワも個体差がありますが、特に牛のショルダー部分の皮を使ったものには、何本も入っていることも珍しくありません。
色ムラ
色ムラが出ることも、天然皮革ならではの風合いの一つです。一枚一枚質感や繊維の密度が異なるため、染めムラになることは少なくありません。通常、ムラになるのは良くないイメージがありますが、革の世界では立派な個性です。
バラ傷
バラ傷とは、虫刺されや引っかき傷などが加工後も残ったものです。線状やホール上になった傷があれば、それは天然皮革ゆえの特徴。傷のみならず、動物のホクロがそのまま残るケースもあるため、あわせて自然の風合いを楽しんでみてください。
天然皮革の特徴(2)水濡れには弱いが丈夫
天然皮革は合成皮革との違いでも述べた通り、水濡れにはあまり強くありません。しかし、経年変化を楽しめることから、お手入れすれば長期的に使える丈夫さはメリットです。
雨の日は使用しないか、雨除けのカバー・防水スプレーをかけるなど工夫してみてください。万が一雨に濡れた場合は、すぐに水分をふき取ってよく乾かすことをおすすめします。
天然皮革の特徴(3)使うほどに肌になじむ
天然皮革のアイテムは、使うほどに肌になじむ性質があることもポイント。湿度を吸収すると膨張し、使っているうちに触れている部分の形に沿っていくためです。バッグであれば、持ち手部分がどんどんと手にフィットしてくるのが分かります。
天然皮革をお手入れするときの注意点
独自の風合いや肌になじむ感覚を楽しめる天然皮革ですが、お手入れするときにはいくつかの注意点があります。天然皮革は、お手入れしにくいというイメージを持っている方も多いです。しかし、コツさえおさえておけば難しくはありません。
以下では、お手入れするときの注意点を3つご紹介します。
お手入れの注意点(1)雨や雪の日を避ける
雨や雪の日は、使用を避けた方が良いだけでなく、お手入れするうえでも好ましくありません。雨や雪に濡れたアイテムは、最終的に風通しの良い場所で乾かすのが基本です。
もし湿度の多い日ならば、湿気を吸収してなかなか乾かないとともに、半乾きで保管してしまえば、カビの発生につながってしまう可能性もあるため注意してください。
お手入れの注意点(2)防水スプレーは必要最低限にとどめる
注意点の二つ目は、防水スプレーは多用しないということです。水濡れに弱い天然皮革は、雨の日の防水スプレーが欠かせません。しかし、表面をコーティングする効果があるため、天然皮革の呼吸を妨げ、状態悪化につながるリスクを伴います。
さらに、防水スプレーが合わなければ、色落ちや染みの原因になってしまうこともあるため要注意です。
お手入れの注意点(3)高温多湿の場所を避け、正しく保管する
お手入れを終え、保管するときの注意点もあります。環境に影響を受けやすい天然皮革は、高温多湿の場所を避けて保管することが大切。極度の光を避け、購入時についてきたボックスなどに入れて保管してください。防湿剤・防虫剤を入れておくのも有効です。
天然皮革のバッグの場合は、中に型崩れ防止の“あんこ”を入れて保管します。さらに、持ち手は立てて置くのが理想的です。
天然皮革とは経年変化と個性を楽しめる上質素材
天然皮革とは、牛や豚、カンガルーなどの皮を鞣してできた稀少価値の高い素材です。合成皮革との違いは、長く使い続けてこそ分かります。水濡れや湿気に弱く、高価ではありますが、天然素材ならではの個性を感じられるのが最大の魅力です。
血筋やバラ傷などが醸し出す風合いと経年変化を楽しめるのは、合成皮革にはない特徴。お手入れするうえでの注意点を守りながら、天然皮革の世界にどっぷり浸ってみませんか。